障害者にあれこれやらせて、視聴者に安っぽい感動を『与える』のを『感動ポルノ』と称することになったらしい。
まあつまり、24時間テレビのことを指すんだろう。



晩酌タイム終盤。早朝5時。
富士山少年が6合目にいた。中継で「ご来光は見えなかったけど、雲海が凄いです」とかって説明の後、「これから頂上を目指します」。
見た目、すげー天気悪ぃんだけど。雨具装備だし。風強えし。
つーか、多分、肝心の当人(少年)だと思うんだが、何か……俺の目には肩が落ちてる感じに見えたんだが。
その直後に遠泳少女。40kmを8人でリレーしながら泳ぎ切るとゆー企画。
気温低い、水温低い、波ややあり。
本人、やる気満々。
プールとはまったく環境が異なるが、良い経験になるだろうし、メダリスト達と泳げるのも良い体験になるだろうしな。


寝た。
起きた。
書斎ですこしばかりネット、そして飯を食いに居間へ。
富士山少年、登ってる。
ここでばーちゃんから情報。
「この子、両足が悪いんさ」
それで6合目から登ってたのか。普通は5合目だもんな。
テレビの音を聞きつつ飯。
『1合目からここまで、ようやく頂上が見えてきました!!』
——は?
小学生の両足不自由なガキを、台風の影響が出てる悪天候の中、下から登らせたんかい!
つか、俺自身が高所ダメな人間なんで「高山病大丈夫なんかいな」と思った。
次に、ジャンプ少女が映った。小学校低学年くらいかな、10歳以下は確実。
子供用のジャンプ台から、目標は17mだったか。スキージャンプ。
ちょうど飛んできて、少女の顔アップ。
——お前、目ぇ死んでねえか?
「さっきの記録より50cm伸びたよ!」と大人は盛り上がってんだが、本人は死んだ目。受け答えも弱々しく、言葉すくな。
ばーちゃん情報。
「この子、台の一番上から飛ぶって言ってたんだろも、いざ登ってみたらおっかなくなって、結局1段下から滑ってんだわ」
あー……最初にすげえ怖ぇ思いして、そこで心が折れたんだな。
で、その折れた少女を飛ばせてる訳だ。周囲の大人が誰も止めずに。
出来高とか尺とかの大人の事情なんだろうけど。
ちょっと非道なんじゃねえかな……と感想。

水泳少女。波に揉まれ、息継ぎにも難儀してるだろうに、水も塩辛いだろうに、ザクザク泳ぐ。
プールと違って底が見えないのが怖い以外、まるで無問題ぽい。
グループのチームワークや雰囲気も良い。何しろ本人がやる気満々なのが良い。
だからグループがまとまるんだろう。

合唱。小児がんで亡くなった天才音楽家の曲を歌う。
どんな曲だろうかとワクワクしていたら、普通の小学校高学年でも作れそうな曲だった。
そうか、若くして死ぬとやはり『天才』の称号がつくのか。
本人、草場のお陰で死にそうなほどの羞恥プレイ状態だろうな……。

おお、富士山少年が頂上に着いたか。
全然嬉しそうな雰囲気なし。まるで鳥居の前に立つ、結界の先に進めない亡霊のようだ。

書斎に籠もってあれこれ。
ネットをチェック。
『富士山登ってた子、登ってる途中に岩に座って頭痛いって言ってた』
高山病だ、たった今下ろせ!!
って、無理やり登らせたんかい!!
俺的最悪の非道。下肢障害少年が1合目からの登坂、悪天候、頭痛、数え役満。
ヘタすりゃ死ぬぞ。富士山舐めんな。
どうりで亡霊みてえな状態だった訳だ。実際に魂抜けてたんだろうからな。

水泳少女は無事に目的地まで泳ぎ切った。
疲れた顔してたが、すげえ嬉しそうだった。インタビューにもしっかり答えてて、一服の清涼剤だったよ……心の救いをありがとう。感動じゃなくて御免な。
だが認めてるぞ。障害も健常も関係ねえよ、お嬢がやったことは。

何かもう、感動ポルノつーより、怒りと同情のるつぼだったね。
『子供』の『障害者』ばっか使ってんじゃねえか。視聴者バカにしてんのか?
『子供と動物は視聴率が取れる』ってのがテレビ業界の定説なんだが、それを当てはめるなら『子供の障害者は視聴率が取れる』ってことかね?
そうか、知的障害と身体障害は動物と同列か。
そういや、俺がチラ見した範囲では池沼視なかったが、時間帯が半端だったせいか?
それとも池沼自体の出番がすくなかったのか?
池沼は扱いが面倒臭えからなぁ……。



結局、こんなんで『感動!!』なんかしてる奴は、障害者を見下してんだよな。
自分よりヒエラルキーの低い奴が悪足掻きしてるのを上から見て「すごい頑張ってる!」って感じるんだろ?
つまり見世物だ。
ネットで『障害者に芸させて客に投げ銭させてる』と書いてる奴がいた。
禿同。それ以外に適切な言葉がねえ。
大昔のお化け屋敷が、テレビって舞台で復活したと。
昔はな、身体障害者ってのは見世物小屋に売られたんだよ。穀潰しだから。
で、「親の因果が子に報い——」てな調子でさらし者。

気が付きゃ海外支援しなくなり、大人を取り上げなくなり、池沼が減ってきた時点で、24時間テレビはもはや『巨額が動く見世物小屋』と化した。



ただ、俺は『障害者を笑う』とゆー境地に至ってない。
障害者による障害者ネタの漫才とか、まぁ演ってる側が素人?だからかもしれんのだが、笑えねえんだよなあ。
これは正直に『面白くねぇ』んでね。ネタが悪ぃとは言わん。
だからテンポが良い掛け合い漫才に仕上がれば、笑えるんじゃねえかな。
頑張ってる姿は……何か笑えねえ。足掻いてる自分と重なるような。
……ああ、そう考えりゃ笑えるかもしれね。
足掻いてる俺の姿は滑稽だもんなーwww



20代禮人さん。夕刻、駅の近くを歩いてた。
白い杖持った奴が、通りすがりの人に声かけてる。
何か会話した後、離れて、またべつの誰かを捕まえる。
何やってんだ?と思いながら歩いてたら、やっぱし捕まった。
「中野駅まで連れて行ってくれませんか?」
いや、俺、今中野駅から来たんだよ。15分ぶん戻れってか?
図書館閉まるし。
「や、御免、ちょっと無理」
したら、そいつ、捨て台詞。

「何てみんな不親切なんだ!!」

あのな、ひとりで行き来出来ねえくせに同伴者もなしに出かけたあんたの敗け。
これ、頑張ってるんじゃーなく、単なる暴挙。
しかも夕刻。みんな家路についてんだ。主婦なら飯作らなきゃならん、子供が腹を空かせて待ってるんだぞ。
ビジネスマンだって「よし、あとひと踏ん張り」って、営業先に向かってるのかもだ。時間厳守、遅れるわけにはいかん、お得意様に失礼だからな。
そんな時間帯に、勝手が判らんとこをうろついてる。
誰も助けてくれねえって逆ギレして喚いてる。
あの時「ぜってー障害者なんか助けねえ」と固く心に誓った禮人さん。
ずっと「けっ、弱者の旗を立てたお偉い様か」と見下してたのは事実。
今は可能な範囲で助力するけどさ、考えなしの障害者に貸す手は、やっぱ持ってねえかも。



結局、美談なんかねえんだよ。そんなのは幻想。健常者の思い込み。
『与えられた感動』なんか、感動じゃねえの。
近年の24時間テレビってのは、最初から『視聴者に感動を与える』って、上から目線のスタンスで作られてんの。そんなの真に受けてちゃダメなの。
自分の目で視ろよ。冷静に考えろよ。
『障害者が頑張ってるんだから、私も頑張ろう』って思ってんだろ?
『力と勇気をもらいました』とか言ってんだろ?
見下してんだろ?本心から視線逸らして『感動しちゃう自分』に酔ってるんだろ?
気付けよ、自分の傲慢に。



障害者がいろんなことにチャレンジしたがるのは良いと思う。
俺のように「もうこれ以上頑張れません」てな軟弱人間は撥ねといて、頑張れる、頑張りたいって障害者がいるなら、周囲にはどんどん応援してほしいと思う。
だが、もしもその希望の中に『ちょっといくらなんでもそれはヤバイ』てのがあったら、説得してやめさせるのもフォローだと思う。
俺は何年か前の『全盲の少女がロードバイクで走る』って企画に戦慄と怒りを覚えて以来、危険に過ぎる挑戦は止めてやれと強く思ってる。
ママチャリに比べて、俺が乗るクロスバイクはタイヤが細い。が、ロードはさらに細い。接地面が小さく、バランスを取るのが難しいんだ。
しかも、つま先がつくギリギリの高さにシートをセットする。そうしねえと力が逃げちまうからだ。
俺は結果が怖くて視なかった。練習シーンで舗装路の脇の草むらに突っ込みまくってたから。
誰も止めなかったのか。全盲じゃあ受け身も出来ずに大怪我するかもしれんのだぞ。
スポーツ車で思い切り落車するのがどういうことか、目が見えねえ奴には判らねえんだぞ。

以来、無謀な挑戦は全力で止めろ、と思ってる。
今回の富士山少年は、その典型例だった。悪天候って時点で中止するべきだった。
もしも『障害者も健常者も同じ人間なんだ』と本心から思ってるなら、障害者に危険なことをさせねえでくれ。
健常者が「目隠しして、乗ったことのないロードに乗る」つったら、笑顔で励まして応援するのか?
小学生の男子が悪天候の富士山に1合目から登るつったら、止めねえのか?

本当に『同じ』なら、止めろ。
後悔は先に出来ねぇ。先に出来るのは『正常な判断』だけだ。
その上でなら、勝手に感動ポルノでも何でもやってろ。乗っかる障害者がいるんだから、この先も適当に続けていけるだろうさ。

死人が出なきゃあな。



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